始まりの唄

僕は1月が好きではない。やたらと謹賀新年と騒ぎ立てるテレビ。形式的な年始の挨拶。親戚の集まり。

 

 

年末は心躍るのに、どうしてこうなのか。平成が終わる年、2019。ニュース速報は、新元号発表期日を伝えていた。

 

 

 

朝まで生テレビをかけた。25:00を少し回った頃だったと思う。「平成の総括と"新時代"」クソみたいな番組、クソみたいなテーマだ。落合陽一の鋭い眼光が印象的だった以外、なんの計画性もない議論が、"知識人"でいらっしゃるヤツらの間で交わされていた。

 

 

誰かが言った。

 

 

 

「昭和を引きずった30年、それが平成」

 

 

うるせえよ。

 

 

じゃあそんな平成で生まれ、育ち、今を生きている俺らはどうなるんだよ。

 

 

問いたかった。

 

 

4日になったので帰京した。バカに大きなスーツケースに、荷物とお年玉と地元の匂いをパンパンに詰めて。別に4日になった「ので」帰ったわけじゃない。でも、4日になったから帰った。

 

 

日が落ちていく代わりに、窓からの景色は段々と、煌びやかに輝く東京に変わっていった。

 

 

次は、御茶ノ水~御茶ノ水~お出口は、右側です…

 

 

 

中央線のアナウンスは何一つとして変わらず、時を刻んでいた。凛として冷たい東京は、誰もが綺麗に整列してエスカレーターの左側に並び、その脇をサラリーマン風の男が駆けてゆく。精密な歯車が動くように、なにも狂いがない。

 

 

明日からは、また日常が始まる。軽い絶望と迫り来る何かの焦り。

 

 

 

今年の目標を決めた。

 

100冊本を読む。家計簿をつける。写真を撮る。ブログを書く。都心に出る。好きなバンドのライブに行く。ダーツする。大学に行く。知り合いを増やす。

 

 

母がかつて、寂しそうにぽつりと呟いていたのを思い出した。

 

"私も学生の頃、怖がらずもっと外に出ればよかった。渋谷も新宿も…"

 

30年前の東京は、バブル絶頂で、煌々と光って綺麗だったのだろうか、後ろに見え隠れする陰も、目がくらんで見えないくらいに。

 

 

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始まりの唄を歌え。最後の青春と、若さを謳歌しろ。全部やれ、全速力で駆け抜けろ。冬の星空が霞む前に。

 

 

今年のクリスマスイブは、四ツ谷で鳴り響く教会の鐘が残酷だなんて感じないくらいに、強くなりたい。忙しなく家路につく人々なんて気にならないくらいに、軽やかになりたい。