東京発田舎行き (No.012)

 15:00 発の特急を目前にして、上野駅のホーム屋根には猛烈な雨が叩きつけ、断続的に大きな雷鳴が轟いていた。

 

ゲリラ豪雨か夕立か。

 

ふと頭をよぎるものの、上野駅という大きな屋根の下にいる僕にとってはなんら影響がない。むしろ、連日の暑さに辟易していた身としては雨音は心地が良かった。

 

数年前、東京に遊びに来たときはホームを探すのにもひと苦労で、何度も切符に印字された発車時刻と、頭上の電光掲示板を見比べてはどぎまぎしていた。そんな記憶もまた一興。

 

特急は定刻から6分ほど遅れて発車し、車内には停車駅を伝えるアナウンスと人々の安息感が広がる。

 

親に電車に乗った旨をLINEで飛ばしたのちに、僕はカツサンドをおもむろに取り出す。このとき、ドリンクホルダーにはスタバで買った抹茶の飲み物が突き刺してある。(正確な名前がわからない)

 

きっと西海岸のカウボーイとか、ダグラス・マッカーサーならカツサンドの代わりに葉巻を取り出してカッコよく吸い始めるところなんだろうけど、なにしろここは日本で、現代で、何より全席禁煙だ。同じシチュエーションにカウボーイやマッカーサーが置かれたとしても、残念ながら葉巻は吸えないだろう。

 

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誰が決めたわけでもないけれど、電車で帰省するときはいつも無意識に買ってしまうカツサンドと抹茶の組み合わせ。買うと帰省への実感が湧くような気がするんだけれど、もしかしたら逆で、実感が湧いたから買っているのかもしれない。

 

冗長に話が逸れてしまった。戻そう。

 

電車内部はホームや駅の喧騒とは隔絶された空間で、どこかアナーキーで、でもその中に一端の統一性を孕んでいる。おそらく、同じ方向に進む電車の中では、誰もが躊躇うことなく地元の訛りで話しているからだ。田舎民が、都会の呪縛から開放される瞬間とも言える。

 

 

 

そんなことをぼんやりと考えているうちに、いつの間にか微睡んでいた。気づけば電車は2回県境を越え、福島県内へと進入している。最寄り駅の車窓からは、節々に思い出が詰まった道や建物が見える。そろそろ終点だ。

 

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そして僕は残った飲み物を一気に流し込み、降りる準備を始める。3ヶ月ぶりの故郷に、少し胸が高鳴る。上野で激しかった雨とは対照的に、故郷には綺麗な夏空が広がっていた。